広島で、IPv6技術の導入・普及を推進する広島地域IPv6推進委員会様が、地域のネットワーク技術者・研究者に向けた勉強会を行い、得た知識の証明のために、IPv6基礎検定をご活用いただきました。
そこで、勉強会を担当された広島大学情報メディア教育研究センター 近堂氏に、勉強会の様子や工夫されたこと、IPv6基礎検定を受験された印象についてお話を伺いました。
<団体情報>
団体名:広島地域IPv6推進委員会
https://www.ipv6hiroshima.jp
<インタビュー>
広島大学情報メディア教育研究センター 近堂 徹 様
・広島地域IPv6推進委員会の取り組みや活動、参加者について教えてください。
広島地域IPv6推進委員会は2005年7月にスタートしています。当時IPv6は実験・開発段階から本格的に普及・拡大する段階へと進みつつありましたが、その際の技術的課題を検討するとともに、広島地域においてIPv4からIPv6への移行が確実かつ円滑に行なえることを実証し、IPv6の導入および普及を推進することを目的として設立されました。
設立以降は年2回のセミナーや少人数向けのハンズオンセミナーの開催など、人材育成や情報交換のためのコミュニティ形成を継続して行っています。セミナーは毎回50~100名ほどの参加者数で推移しており、2024年時点で延べ2,500名以上の方にご参加いただきました。参加者は主に広島地域のネットワーク・システムエンジニアや大学関係者ですが、コロナ禍中にオンライン・ハイブリッド開催に対応したことで、今では他業種の方や広島地域以外からも多くの方にご参加いただいています。
・IPv6基礎検定の受験を参加者に対してすすめることになったきっかけを教えてください。
年2回のセミナーでは毎回アンケートをとっていますが、その中で、「基礎的な知識を知りたい」、「議論に参加しやすい少人数のセッションを開催して欲しい」という声を定期的に頂いており、新しい取り組みとして勉強会を開催することしました。せっかく勉強会を行うのであれば、見える形の成果が欲しいということになり、IPv6基礎検定の合格を参加者のゴールとして設定しました。
昨年度から開始したこの取り組みでは、勉強会の主教材として使う「プロフェッショナルIPv6」の冊子版購入とIPv6基礎検定の受験料支援を行っています。昨年度の参加者は8名で、企業のエンジニアやネットワーク技術を学んでいる大学生・大学院生が集まりました。
勉強会は月に1回のペースでオンラインにて行い、12月は当委員会の会員でもあるNTT西日本様の共創スペースをお借りして対面で実施しました。勉強会だけでなく、先進的なデジタル技術のデモや ICT活用事例の展示についてもご説明頂き、参加者にとっても刺激になったのではないかと思います。
・受験する人に対して、勉強会を行ったとのことですが、教え方のコツなどはございますか。
勉強会では、誰かが一方的に教えるというよりは、”自分が学んだことを教えあう”をキーワードに活動しました。イメージとしては輪講形式です。主教材の「プロフェッショナルIPv6」の中から重要な個所をピックアップして各参加者に学習の担当範囲を割り当て、学んだことをプレゼンテーションしてもらい、質疑応答で内容について議論する、というスタイルです。
心掛けてもらったのは、書かれている内容そのままを説明するのではなく、他の文献も併せて調べて深掘りしたり、自分の所属組織ではどう運用されているのかだったり、実際にIPv6のデータの中身を見てみたりなど、様々なところから知識を得るようにして、アウトプットできるようにしてもらいました。
そして、他の人に理解してもらえるよう伝えるには、自分がきちんと分かっていないと伝えられないこと、他の人にどう伝えれば理解してもらえるか、を意識して資料を作成してもらいました。
結果的に、勉強会の内容は結構難しい内容になっていましたが、参加者からするとすごく力がついたと感じてくれたようです。
・勉強会以外に受験者に対して何かフォローをされましたか?
勉強会が終わりに近づいたころ、みんなで想定問題集を作ろうと提案をしました。
というのも、試験では選択式の問題に回答する形になりますので、勉強会でやっていたような担当範囲の学習とプレゼンという形式だとギャップがあります。そのため、勉強会の成果を試験に結び付ける仕掛けが必要だと考えていました。
想定問題集は、自分が担当した範囲から試験に出そうな問題を考えてもらうのと、生成AIを利用していくつか問題を作成し、スプレッドシートで共有しました。最終的に50問ほどの問題集になりましたが、難易度も様々で幅広く知識を問う問題集になりました。
・受験した方の感想を教えてください。
勉強会の参加者8名でしたが、最終的に支援を受けて基礎検定を受験したのは7名です。2024年6月末時点で7名全員合格しました。
受験した人からは、「勉強会の成果が出てよかった」、「試験合格という見える形で認められたのは嬉しかった」、「満点を狙っていたのに1問ミスして取れず、悔しい」、「勉強会は難しかったけど、その甲斐あって試験を問題なくクリアできた」という言葉をもらっています。
また、基礎検定から次のステップにもチャレンジしたいという声が上がっています。
受験者がこれからもっと増えれば試験の価値も上がりますし、その結果、応用や実践的な部分の検定が新たに提供されるようになったら嬉しいと思っています。
・普段学生の方を見ている立場から見ると、基礎検定の難易度はどのように感じましたか?
TCP/IPの基礎知識を持つ学生が、プロフェッショナルIPv6を読んで勉強して受けるとすると、難易度としてはちょうどよいと感じました。
IPv6をずっと触ってきた者からすると、難易度はかなりやさしいと感じましたので、基礎の先を行くような応用検定などが今後出てくると良いなと思っています。
・IPv6検定をこれから受験される方にアドバイスをお願いします。
私が所属する広島大学では、10年ほど前からキャンパスネットワークにIPv6を導入し、全学的に運用しています。
近年では、クラウドサービス事業者やモバイル事業者を中心にIPv6は着実に浸透しつつあり、多くのユーザーが意識せずにIPv6を利用する環境になってきています。一方、中小企業や大学を中心に組織ネットワークのまだ多くがIPv4です。これらの組織内ネットワークや情報システムのIPv6化を進めていくためには正しい知識を持って取り組む必要があります。ただし、広島地域の企業の方々に聞くと、まだまだ中小企業で展開していくにはハードルがあると言われます。
IPv6基礎検定は、IPv6の正しい知識が身についていることを証明できます。
今回の勉強会の参加者には、主教材のプロフェッショナルIPv6の冊子版をあえて購入して配りましたが、無料の電子版も配布されていることもあって教材自体が手に入りやすいのも魅力です。まずは教材で知識をつけてもらい、IPv6基礎検定にチャレンジしてもらえればと思います。
IPv6基礎検定については以下のページをご覧ください。
https://network-engineer.jp/ipv6basic