第9 回「近隣探索プロトコル(2)ルータとプレフィックス情報の発見」

こんにちは、小澤です。
前回は、IPv6 ネットワークの重要な要素である近隣探索プロトコル(Neighbor Discovery Protocol, NDP)の概要について説明しました。近隣探索プロトコルは、IPv6 ネットワークにおけるルータの発見、プレフィックス
情報の収集、リンク層アドレスの解決、近隣不到達性の検知などのタスクを行うために使用されます。このプロトコルは、ICMPv6 メッセージを用いて実装され、IPv6 ネットワーク内の各種通信情報の交換を可能にします。
今回からは、近隣探索プロトコルについてさらに詳しく説明していきます。今回取り上げるのは、教科書「第6 章 近隣探索プロトコル」の「6.2 ルータとプレフィックス情報の発見」(129 ページ〜135 ページ)の部分です。なお、「プロフェッショナルIPv6」の電子書籍は無償でダウンロードできます。
以下をご覧ください。
https://booth.pm/ja/items/913273

ルータの発見とプレフィックス情報の収集

近隣探索プロトコルでは、ルータ発見やプレフィックス情報の収集に、ICMPv6 の「Router Advertisement(RA)メッセージ」と「RouterSolicitation(RS)メッセージ」を使用します。この2 つのメッセージは、IPv6 ネットワークにおけるルータとホストの通信をサポートし、ネットワーク設定に必要な情報の交換を効率的に行うものです。RA メッセージはルータからホストに対してネットワーク設定情報を提供し、RS メッセージはホストからルータに対してRA メッセージの送信を要求します。

Router Advertisementメッセージ

Router Advertisement(RA)メッセージは、IPv6 ネットワーク内のルータからホストに対して定期的に送信され、ホストのネットワーク設定に必要な情報を提供するものです。これにはルータのIPv6 アドレス、ネットワークプレフィックス情報、ルータの推奨するHop Limit などが含まれます。

・プレフィックス情報:サブネットマスクやネットワークプレフィックス。
・Hop Limit:ルータを通じて転送されるパケットの推奨Hop Limit。
・デフォルトルータ情報:ルータがデフォルトルータとして有効である期間など。

RA メッセージはICMPv6 の一部として定義されていますが、RFC4861 でそのフォーマットや仕様が詳細に定義されています。このメッセージは、IPv6 ヘッダのHop Limit フィールドに255 を設定して送信されます。これにより、メッセージが他のリンクを経由していないことを保証します。

Router Solicitationメッセージ

Router Solicitation(RS)メッセージは、ホストがルータに対してRA メッセージをすぐに送信するように要求するために使用されます。これはホストがルータからの情報を早く受け取りたい場合や、ネットワーク設定をすぐに確立したい場合に使われます。RS メッセージはIPv6 ヘッダのHop Limit フィールドに255 を設定し、全ルータアドレス(ff02::2)を宛先として送信されます。
このメッセージにはオプションとしてSource Link-layer Address が含まれることがあります。

ルータとホストの役割

ルータとホストの間での通信は、近隣探索プロトコルにおいて重要な役割を果たします。

ルータの役割

ルータは、ホストのネットワーク設定に必要な情報を提供します。RA メッセージを通じて、ネットワークプレフィックス情報、ルータの有効期間、近隣不到達性検知のためのタイマーなどの情報を送信します。また、ホスト側からのRS メッセージに対して応答としてRA メッセージを送信します。
・ネットワークプレフィックス情報
プレフィックス情報は、ネットワークプレフィックスとサブネットマスクの情報を含みます。これは、ホストが自身のIPv6 アドレスを生成するために使用します。
・デフォルトルータ情報
RA メッセージには、デフォルトルータとしてルータが有効である期間を示すRouter Lifetime フィールドが含まれます。これにより、ホストはルータがデフォルトルータとしてどれくらいの期間使用可能かを知ることができます。
・定期的な送信
ルータは定期的にRA メッセージを送信し、ホストが最新のネットワーク情報を受け取れるようにします。この送信間隔は、ルータで設定された最小時間と最大時間の間のランダムな値とされています。
・リンクローカルアドレス
ルータはリンクローカルアドレスを通じて通信します。リンクローカルアドレスはルータの識別に使われ、その変更は推奨されていませんが、変更が必要な場合はRA メッセージで変更を通知します。ホストの役割ホストは、ルータからの情報を受け取り、自身のネットワーク設定に活用します。また、ホストがRS メッセージを送信することで、必要な情報をルータに要求することができます。ただし、ホストがRA メッセージを送信することは禁止されています。
・デフォルトルータの管理
ホストは、RA メッセージで送信されるRouter Lifetime フィールドの情報を使ってデフォルトルータの管理を行います。ルータの有効期限が過ぎる前に新しいRA メッセージが来ない場合、ホストはDefaultRouter List からそのルータを削除します。
・マルチキャストグループ
ホストは、近隣探索プロトコルを使用するために、全ノードアドレスに参加し、マルチキャストグループに参加します。

まとめ

今回は、近隣探索プロトコルにおける「ルータとプレフィックス情報の発見」の箇所について説明しました。これらの概念はIPv6 ネットワークの基本的な運用に不可欠で、ルータとホストの間の通信を円滑にするために用いられるものです。
次回は、近隣探索プロトコルにおける「リンク層アドレスの解決と近隣不到達性の検知」について説明することにします。次回も引き続きご覧いただければ幸いです。
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